福山市鞆の浦歴史民俗資料館は、広島県福山市鞆町後地に位置する博物館です。「潮待ちの館」の愛称でも親しまれており、古くから「潮待ちの港」として栄えた鞆の浦の歴史と文化を紹介する施設として、多くの観光客や歴史愛好者に訪れられています。
福山市鞆の浦歴史民俗資料館は、古代から栄えた鞆の浦を中心に、瀬戸内海の歴史と文化を紹介する施設です。この資料館は、福島正則が築いたとされる鞆城跡(福山市指定史跡)に建てられています。鞆城は、かつて瀬戸内海を行き交う船の安全を守る要衝の地であったことから、戦国時代から江戸時代にかけて重要な役割を果たしました。館内からは、鞆公園(国の名勝)や四国の山々を見渡すことができ、ここからの風景は訪れる人々に深い感動を与えます。
しかし、資料館の建設は鞆城跡の十分な調査が行われないまま進められたため、遺構の一部が破壊された可能性が指摘されています。また、資料館に通じる坂道にある石垣は、建設地にあった鞆城の石材を集めて模擬的に組み上げたもので、当時の城の面影をわずかに残しています。これらの背景を理解しながら見学することで、鞆の浦の歴史により深く触れることができるでしょう。
福山市鞆の浦歴史民俗資料館は、福山市が運営を行っていますが、地元住民や福山市民によって組織された「福山市鞆の浦歴史民俗資料館友の会」が、その活動を積極的に支援しています。この友の会は、鞆の浦の歴史遺産を活かしたまちづくりに尽力しており、地域の恒例行事である「鞆・町並みひな祭り」や「八朔の馬出し」などのイベントでは、運営の中心的な役割を担っています。これらの行事は、鞆の浦の伝統と文化を次世代に伝える重要な活動であり、地域住民や観光客との交流の場としても大変重要なものです。
また、友の会は資料館の活動を支えるだけでなく、鞆の浦全体の観光振興や文化継承にも積極的に取り組んでいます。これにより、鞆の浦の歴史的景観を守りながら、訪れる人々にその魅力を伝え続けています。
福山市鞆の浦歴史民俗資料館では、鞆の浦やその周辺地域の歴史や文化を多角的に紹介する展示が行われています。以下は、主な展示内容の一部です。
鯛網漁は、鞆の浦で古くから行われている伝統的な漁法です。資料館では、その漁の様子を再現したジオラマが展示されており、漁師たちが船上で協力して網を引き上げる姿が臨場感たっぷりに描かれています。
瀬戸内海は航路が多いため、昔から多くの船が行き交っていました。そのため、鞆の浦では船の停泊に欠かせないイカリの製造が行われていました。資料館には、イカリづくりの様子を再現した鍛冶場が展示されており、当時の職人たちの技術や作業風景を垣間見ることができます。
鞆の浦にゆかりのある箏曲家・宮城道雄の愛用した琴や遺品も展示されています。宮城道雄は、日本の伝統音楽を現代に伝える重要な人物であり、その作品は今なお多くの人々に親しまれています。資料館では、彼の生涯や功績についても紹介されています。
鞆の浦は、かつて朝鮮通信使が立ち寄った地でもありました。朝鮮通信使は、江戸時代に朝鮮王朝から日本に派遣された外交使節団であり、その旅程の中で鞆の浦に滞在した記録が残っています。資料館では、彼らの活動や文化交流の様子を伝える貴重な資料が展示されています。
開館時間: 9:00~17:00 (10月~3月は16:30まで)
休館日: 月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12/28~1/3)
入館料: 大人150円、高校生以下は無料
電車とバスでのアクセス: 西日本旅客鉄道(JR西日本)山陽本線および山陽新幹線の福山駅から、鞆鉄道バスに乗り約30分、「鞆の浦」停留所で下車し、徒歩5分の場所にあります。
車でのアクセス: 福山駅から鞆の浦までは車で約20分です。周辺には駐車場も完備されていますので、お車でのアクセスも便利です。
福山市鞆の浦歴史民俗資料館は、古代から続く鞆の浦の歴史と文化を深く学べる貴重な施設です。鞆の浦の伝統的な生活や文化、そして多くの歴史的出来事を展示物を通じて体感することができます。また、地域住民との交流の場としても重要な役割を果たしており、鞆の浦の魅力を次世代に伝えるための重要な拠点です。鞆の浦を訪れた際には、ぜひ立ち寄ってその歴史と文化に触れてみてください。