大久野島のうさぎは、広島県竹原市に位置する大久野島に生息している野生のうさぎです。彼らは観光客に人気があり、「うさぎの島」として国内外で知られています。本項では、その沿革や繁殖の様子、また観光客向けの注意点などについて詳しく説明します。
大久野島に生息するうさぎの起源については、主に村上初一氏の証言に基づいています。彼は、かつて毒ガス作業に従事していた毒ガス資料館の初代館長であり、島でのうさぎの飼育に関する証言を残しています。
戦前および戦中、大久野島では旧陸軍による毒ガス製造が行われ、びらん剤や血液剤の毒性・耐性を調べる実験にウサギが使われていました。しかし、戦争が終わった後、当時のウサギは全て殺処分され、その子孫は残っていないとされています。
現在の大久野島のうさぎは、1971年に地元の小学校で飼育されていた8羽が島に放されたものが起源とされています。その後、うさぎは野生化し、繁殖が進んでいきました。また、観光客が持ち込んだり放棄されたうさぎも個体数増加に寄与しました。
2011年、干支が卯年であったことも影響し、日本のメディアやCNN Travelが大久野島のうさぎを紹介し、その知名度が急速に広がりました。同年、旅行会社が国内外向けにウサギをテーマとした旅行プランを企画し、さらに多くの観光客が訪れるようになりました。
2010年度の来島者は約152,000人でしたが、2014年には約186,000人、外国人観光客も急増しました。2017年には来島者が約36万人に達し、うさぎとのふれあいが島の主要な観光資源となっています。
大久野島に生息するうさぎは、すべて外来種であるカイウサギ(家畜化したアナウサギ)です。この種は国際自然保護連合によって「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定されていますが、観光の魅力としても注目を集めています。
カイウサギは非常に繁殖力が高く、1年に3〜5回、1産で1〜9羽の仔を産みます。1羽のメスで年間20〜25羽の仔を産むこともありますが、1歳までに死亡率が90%以上という厳しい環境にあります。草食性で、地下に穴を掘りコロニーを形成し、夜間に活発に行動します。
大久野島の温暖な気候と、捕食者がほとんどいない環境が、カイウサギの繁殖に適しています。島の面積が約70haで、2018年時点では推定920羽以上のうさぎが生息しており、その密度は13.1羽/haです。
近年、観光客が与える餌の影響で、うさぎの分布は人が多く集まる場所に集中しており、密度の増加が懸念されています。
大久野島を訪れる観光客は、うさぎとのふれあいを楽しむことができますが、いくつかのルールを守る必要があります。島内では、次のような注意点が呼びかけられています。
2020年時点で、大久野島では餌やりは禁止されていません。野菜などの餌は、忠海港待合所や島外のコンビニで購入できますが、島内では販売していません。また、うさぎを無許可で島外に持ち出すことは鳥獣保護法に違反し、持ち込むことも動物愛護法違反となります。
大久野島には、観光客向けの付帯施設も充実しています。休暇村では「うさぎのはなくソフトクリーム」を提供するカフェがあり、観光客に人気です。また、島へのアクセスは愛媛県大三島の盛漁港からも可能で、しまなみ海道サイクリングロードからのアクセスも注目されています。
大久野島のうさぎは、戦前の毒ガス実験で飼育されていたウサギとは異なる起源を持ち、現在では観光の一環として親しまれています。繁殖力が強く、多くの観光客を引き寄せる一方で、持続可能な管理体制の構築が求められています。訪れる際は、うさぎや自然環境に配慮し、ルールを守って楽しむことが大切です。