特産のかきを使った“かき飯”は広島県の名物の一つ。そのため、かき飯に加えて多彩なかき料理を詰めた名物駅弁は数多くある。自分で作るなら、ぬめりをとったかきを沸騰した湯にさっとくぐらせてボールにとり、しょうが汁を振って下準備。次に、炊飯器に研いだ米とだし汁、酒、しょうゆ、昆布を入れ、かきも加えて炊く。炊き上がったらかきを取り出し、ご飯を大きく切るように混ぜる。あとはご飯を椀によそい、かきをのせて好みで青のりなどをふって完成。かきの下ごしらえに多少手間がかかるが、旨味が染み込んだご飯の味は格別。
江田島市周辺では、かきの養殖が盛んで、その美味しさを存分に楽しめるのが、かきの旨味がたっぷり詰まった炊き込みご飯です。広島では長い歴史を有するかきの食文化があり、縄文・弥生時代からかきを食べていたことが、貝塚から出土した殻から分かっています。さらに、1500~1600年代には養殖が始まり、今では広島県のかきの水揚げが全国の6割を占めています(農林水産省「令和2年漁業・養殖業生産統計」)。
この地域の湾は波が穏やかでありながら、潮の流れが適度にあります。また、湾に河川が流れ込むことで、梅雨時期から夏にかけて海水中の塩分濃度が薄まる層ができ、かきが好む環境が整います。中国山地からの流入する栄養素などもかきの成長に適しており、広島のかきは大きくて濃厚な味わいが特徴です。味だけでなく、県が独自に食品衛生上の規定を設け、高い安全性も人気の秘密と言えます。また、かき飯は駅弁としても人気で、「しゃもじかきめし」をはじめとするさまざまな駅弁が販売されています。
かきの取れる時季は10月から5月までで、特に12月から2月はおいしさの源であるグリコーゲンが豊富に蓄えられているため、非常に美味しい時期です。
かきを楽しむ方法は、洗ったかきを酒でいりつけ、細かく切ったにんじん、ごぼう、油揚げとだし汁でご飯を炊きます。最後にかきを加えて混ぜ合わせます。かきだけを米と一緒に調味して炊くこともあります。このかき飯は一般の家庭で作られるだけでなく、地元の飲食店でも提供され、全国的にも駅弁として人気を博しています。
主な伝承地域:江田島市
主な使用食材:かき、米、にんじん、ごぼう、干ししいたけ、油揚げ