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三段峡

(さんだんきょう)

三段峡は、広島県山県郡安芸太田町および北広島町を流れる太田川水系の柴木川流域に位置し、総延長約16kmの峡谷です。この美しい渓谷は、国の特別名勝として指定されており、日本百景や森林浴の森100選、日本紅葉の名所100選にも選ばれています。特に、県北東部に位置する帝釈峡と並んでその美しい渓谷美を競い合い、匹見峡や寂地峡とともに、西中国山地国定公園の代表的な景観を形成しています。

三段峡は、2014年度版のフランスの観光ガイド『Guide bleu Japon』で三ツ星を獲得し、海外でもその美しさが広く紹介されるなど、国内外で高い評価を受けています。

地理と地質

地形の特徴

三段峡は、中国山地(西中国山地または冠山山地とも呼ばれる)の中にあり、恐羅漢山などの標高1,000m級の山々が連なる脊梁部に近接しています。この地域は中新世後期からの隆起によって形成され、現在の急峻な地形が生まれました。もともと柴木川は緩やかな山地を流れていましたが、隆起によって川の流れが急激になり、その結果、侵食力が増大して現在のような渓谷が形成されました。

柴木川は北西から南東に流れ、隆起による山列や断層線を直交して横谷(よこたに)を形成し、穿入蛇行が発達しました。こうして特徴的な渓谷が誕生し、周囲の自然と一体となって美しい景観を作り上げています。この渓谷は、太田川流域にある侵食平坦面の最上位にあたる八幡・芸北高原面から流れ下る地点に位置しています。

渓谷の延長と標高差

三段峡は、樽床(たるとこ)ダムから柴木の渓谷入口までが約11kmあり、さらに支流の渓谷も含めると総延長は約16kmに達します。標高は、最高地点が八幡高原(樽床ダム付近)の約800m、最低地点は戸河内町柴木の渓谷入口の約350mで、その標高差は約400mから500mに及びます。

気候と水質

この地域は年間を通じて降水量が多く、冬は北西からの季節風による降雪、夏は梅雨や台風の影響による降雨があります。柴木川の水質は、全域でAA類型に分類されており、基準値を満たしています。上流端には発電用の樽床ダム、下流端には同じく発電用の柴木川ダムがあり、河川水は主に水力発電に利用されています。

地質

三段峡の地質は主に高田流紋岩類で構成されており、その斑晶は主に石英からなります。また、この地域には広島花崗岩類が貫入しており、地質的にも興味深い構造を示しています。

植生と生態系

三段峡周辺は植生が豊富で、特に植生帯の下降現象が国内で唯一見られる地域です。下流側の柴木川と太田川の合流付近である戸河内は、かつて芸北地方のたたら製鉄の中心地であり、その周辺の樹木は製鉄用の薪として利用されたため、現在の植生は代償植生となっています。しかし、三段峡周辺には原生林が残されており、オオサンショウウオやギギ、ゴギ(中国地方のみに生息するイワナ)などの貴重な種が生息しています。

景観の見どころ

三段峡は国の特別名勝(峡谷・渓谷の部)に指定されており、その中でも代表的な景観として、三ツ滝、三段滝、黒淵、猿飛、二段滝の五大景観(壮観)があります。また、これらに竜ノ口や竜門を加えた七景も有名です。

三ツ滝(北広島町)

三ツ滝は柴木川上流にあり、巨岩に挟まれた三曲五段の滝です。畳岩と呼ばれる大きな岩に囲まれたこの滝は、その雄大な姿が見る者を圧倒します。

三段滝(安芸太田町)

三段峡の代表的な景観の一つで、3段にわたって流れ落ちる滝は圧巻です。その名の通り、三段に分かれて豪快に流れる滝の姿は、訪れる人々に感動を与えます。

黒淵(安芸太田町)

黒淵は、柴木川がS字状に屈曲し、原生林に囲まれた突角に位置する美しい淵です。その静寂で神秘的な雰囲気は、多くの人々を引きつけます。

猿飛(安芸太田町)

猿飛は、かつて猿が切り立った岩壁を飛び交っていたことからその名がつけられました。現在は観光舟用の引縄があり、訪れる人々に楽しみを提供しています。

二段滝(安芸太田町)

二段滝は、かつては二段に分かれていた滝ですが、昭和63年の豪雨によって一段目の岩壁が剥ぎ取られてしまい、現在は一段の滝となっています。それでも、その雄大な姿は変わらず、訪れる人々に感動を与えます。

竜門

竜門は、両岸にそそり立つ岩が幅5mの峡門を形成しており、その狭い空間を流れる川の景観はまさに圧巻です。

出合滝

出合滝は、小板川との合流付近にあり、その流れが一体となって美しい滝を形成しています。1930年に記録されたこの滝は、今もなおその美しさを保っています。

耶源(やげん)

耶源は、懸崖に縦方向の節理があり、水が侵食して薬研のような窪みが形成されています。その上部には緑の樹木が茂り、河床には巨岩が散在しており、独特の景観を見せています。

仏岩

仏岩は、円錐状の塔岩で、その頂上に一本の岩松が生えています。この孤立した岩の姿は、まるで仏像のように神秘的です。

天狗岩

天狗岩は、花崗岩が板状節理となって露出した大きな岸壁です。その迫力ある姿は、まるで天狗が住んでいるかのような神秘的な雰囲気を醸し出しています。

石樋

石樋は、流紋岩の河床が続く水路状の流路です。かつてはこの場所に滝がありましたが、滝の後退現象によって現在のような形状になりました。川の流れによってできた美しい景観を楽しむことができます。

樽床の滝(北広島町)

樽床の滝は、柴木川最上流部に位置し、その雄大な姿はまさに壮観です。高さ10m、幅15mの大滝が轟音を響かせながら流れ落ちる様子は、訪れる人々に大きな感動を与えます。

Information

名称
三段峡
(さんだんきょう)

三次・世羅・庄原

広島県