広島市まんが図書館は、広島県広島市にある広島市立の図書館で、漫画と漫画関連資料を専門に扱う施設です。この図書館は、日本で初めての公立の漫画専門図書館として、1997年5月に開館しました。
広島市まんが図書館は、中央図書館の分館として運営されており、附属施設として「あさ閲覧室」も設けられています。まんが図書館は、標高約70メートルの比治山の山頂北側に位置しており、広島市現代美術館の近くにあります。比治山全体が公園として整備されており、この地には終戦直後や建物の移転時に広島市立図書館が一時的に設置されたこともあります。
一方、あさ閲覧室は、広島市が出資する新交通システム「アストラムライン」の上安駅と直結したバスターミナル複合施設の上階にあります。両館ともに蔵書のうち、漫画(作品)の占める割合が99%以上を占めており、残りの1%も漫画関連の資料です。
広島市まんが図書館の利用者層は、子供から高齢者まで幅広く、特に40代の利用が最多となっています。貸出冊数の割合についても、まんが図書館全体の貸出冊数のうち、37%がまんが図書館での貸出、25%があさ閲覧室での貸出、残り38%はまんが図書館以外の広島市立図書館での貸出となっており、広島市全体で漫画の利用が広く行われていることがわかります。
通常、日本の公共図書館では日本十進分類法に基づいて蔵書を分類し、著者記号に従って書架に配置します。しかし、まんが図書館では、ほとんどの蔵書が漫画(分類番号: 726.1)であるため、主題による分類がほとんど意味を持たず、実際には作画者の50音順で配架されています。また、まんが図書館では、蔵書が多いため、各棚に前後2列に並べる形で蔵書を配置しています(あさ閲覧室では1列で配置されています)。
まんが図書館には、当初、閉架書庫がありませんでしたが、2010年に湯来河野閲覧室の空き部屋をまんが図書館用の書庫として活用し、約2万6000冊を収納しました。しかし、その書庫もすぐに埋まり、2012年にはまんが図書館の地下倉庫を新たな書庫として利用できるようにしました。
広島市まんが図書館の前身は、広島市の「比治山芸術公園構想」の一環として1983年に開館した「広島市立図書館 比治山公園青空図書館」です。この図書館は、野外読書を楽しめるミニ図書館として開館し、その際は特に漫画専門ではありませんでした。しかし、1990年に南区図書館が開館したことで、青空図書館の利用者数は大幅に減少しました。
この利用者減少に対して、広島市議会では漫画を導入する提案がされ、隣接する広島市現代美術館や広島国際アニメーションフェスティバルとの関連からも、漫画を用いた青空図書館の再生が議論されるようになりました。最終的に、広島市まんが図書館が設立されることとなり、1997年5月1日に開館しました。初年度には、貸出冊数が約64万冊に達し、翌1998年度には約70万冊という驚異的な数字を記録しました。
まんが図書館の成功により、施設の増築案も検討されましたが、比治山の公園指定や財政難のため実現には至りませんでした。その代わりとして、1999年5月1日に、広島市の新交通システム「アストラムライン」の上安駅前に「あさ閲覧室」が開館しました。あさ閲覧室の開館は、アストラムラインの収益増も目的の一つとしていました。
広島市立図書館では、2002年から2006年の間に、蔵書の不明総数の約3割が漫画であるという事態が発生しました。これを受けて、2009年度からまんが図書館およびあさ閲覧室には、ICタグを使用したブックディテクションシステム(BDS)が導入され、セキュリティ対策が強化されました。
広島市まんが図書館は、日本初の公立漫画専門図書館として、その豊富な蔵書と広範な利用者層に支えられ、広島市の文化の一翼を担い続けています。今後も、多くの人々に愛される施設として、その役割を果たし続けることでしょう。